竹林賢人図鐔 正友 -Masatomo- 12-1776
通常価格:¥220,000
税込
竹林賢人図鐔
正友
-Masatomo-
縦72.55ミリ 横67.3ミリ 切羽台厚4.7ミリ 重量115.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
正友は江戸中期に赤尾派の金工として名を留める鐔工で、赤尾派は越前に興り、のちに江戸へ分派しながら、鉄地の肉彫透に加えて赤銅や四分一などの色金も扱い、器物、植物、人物といった多様な題材を端正な構成へまとめました。正友の詳しい伝歴には未詳の点を残すものの、四分一の穏やかな地色を生かし、細い鏨を自在に操って絵画的な情景を描き出す作域からは、赤尾派が培った確かな地金の扱いと、江戸金工らしい洗練された美意識がうかがわれます。
竹林賢人図は、俗世の名利や権勢から距離を置き、竹林に集って詩酒や音楽、清談を楽しむ高士たちの姿を描いた中国故事に由来する画題で、一般には魏晋時代の「竹林七賢」を想起させます。竹は厳しい寒さにも青々とした葉を保ち、真っ直ぐに伸びながら節を備えることから、清廉、高潔、不屈の精神を象徴し、その竹林に遊ぶ賢人たちは、世俗に迎合せず自らの信念と精神の自由を守る理想的な文人像として、日本でも絵画や工芸、刀装具へ繰り返し取り上げられてきました。
本作は竪丸形の四分一磨地を広々と用い、表の右側へ竹林に集う四人の賢人を寄せて片切彫と毛彫で描き、左側にはあえて大きな余白を残すことで、人物たちの静かな語らいと竹林を包む澄んだ空気を印象深く表しています。
賢人それぞれの顔立ち、髭、衣文、持物を鏨の深浅と線の強弱だけで巧みに描き分け、上方から垂れる竹葉と人物群を斜めに連ねることで、余白の多い画面に自然な視線の流れと奥行きを生み出しており、裏面には左側へ一本の竹を伸びやかに描き、下方に地面だけを簡潔に添えることで、表の人物群とは対照的な静けさと、竹林が画面の外まで続いていくような余韻を残しています。
四分一特有の落ち着いた褐灰色、滑らかな磨地、角耳小肉の端正な輪郭が繊細な彫線を引き立て、遠目には余白を生かした気品ある姿、手元では賢人の表情や衣の文様、竹葉の一枚一枚まで味わえるため、赤尾派正友の絵画的な彫技と文人趣味を長く鑑賞できる、静謐さと確かな格を備えた作品です。