文字散図鐔 無銘(天法) -Mumei (Tenbo)- 12-1770
通常価格:¥35,200
税込
文字散図鐔
無銘(天法)
-Mumei (Tenbo)-
縦86.3ミリ 横83.8ミリ 切羽台厚4.9ミリ 重量151.0グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
天法鐔は、天保年間に制作された鐔を意味する呼称ではなく、厚手の鉄地へ槌目と文字や紋様の極印を施す独特の作風を備えた一群を指し、成立や系譜にはなお明確でない点を残すものの、桃山時代頃から江戸時代にかけて制作され、現存作には「山城住 天法」の銘が確認されることから、年号の「天保」と区別して「天法」の名称が用いられています。
鎚で打ち締めた起伏豊かな地肌へ、鉄が熱を保ち軟らかな段階で「天」「大」「風」などの文字、草花、幾何学的な紋様を鏨で打ち込む極印を特色とし、作例によっては真鍮や金の象嵌も交えながら、整然とした装飾とは異なる鍛鉄の量感と古拙な力強さを表しており、槌目や極印を用いる点で早乙女鐔に近似するため、地鉄、耳、茎孔などを含めて両者を見極める必要があります。
本品は大振りの竪丸形鉄地に両櫃孔を開け、表裏の全面へ様々な文字極印を不規則に打ち込み、文字を整然と読ませるのではなく荒々しい槌目の中へ地文のように散らすことで、見る角度や光の方向によって異なる文字が古色の中から浮かび上がる、天法鐔ならではの素朴で力強い画面を作り上げています。
一つ一つの極印は深さも向きも異なり、輪郭の明瞭な文字、槌目へ半ば沈んだ文字、歳月によって角が柔らかく馴染んだ文字が混在し、その不揃いさが即興的なリズムと豊かな表情を生み、黒褐色に落ち着いた地鉄、厚みのある耳、広い地板の確かな重量感と相まって、細密な彫刻や色金では得られない鍛鉄の迫力を伝えています。
深く打たれた槌目、古拙な文字極印、量感ある鉄骨、古色の育った地肌を総合して制作年代は江戸中期と鑑せられ、離れて眺めれば無骨で堂々とした鉄鐔、手元では地に潜む文字と鎚の跡を一つずつ探す鑑賞品となるため、天法鐔の魅力を率直に味わえる一枚として、文字文や槌目地、力強い古鉄を好む収集に確かな存在感を添えます。