蕨手図透鐔 無銘 -Mumei- 12-1768
通常価格:¥55,000
税込
蕨手図透鐔
無銘
-Mumei-
縦74.4ミリ 横71.9ミリ 切羽台厚3.7ミリ 重量94.0グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 桐箱
蕨手は、若い蕨の先端が力強く巻き込む姿を図案化した古様な文様で、芽吹き、成長、再生を思わせる生命感に満ち、その渦巻く曲線は古代以来の武具や工芸意匠にも通じるため、鉄一色の鐔にあっても簡潔な輪郭だけで伸びやかな動勢と吉祥の趣を表せる、素朴ながら力強い画題です。
本品は丸形の鉄地を広く無文に残し、右上の一隅に大小の蕨手を重ねて透かすことで、量感ある地板の静けさと渦を巻く曲線の動きを鮮やかに対照させ、太い茎から鋭く伸びる先端、二つの渦、その間に置かれた小透が一続きの流れを作り、意匠を中央へ置かない大胆な余白によって蕨手の生命力をいっそう際立たせています。
右上の耳から小透へ通じる細い切込みは、そのすぐ左下に設けられた小透や周囲の透かし口と呼応し、耳の輪郭をあえて一度断って内側の透かしへ視線を導くことで、図柄へ緊張と変化を添える造形上の仕事となり、表裏の同じ位置に現れる線も大小の蕨手が展開する一連の構成へ自然に組み込まれています。
黒褐色に落ち着いた地鉄には細かな鍛え肌と穏やかな起伏が残り、丸みを帯びた耳、鏨の跡をわずかに留める素朴な透かし口、古い刀茎へ合わせて幾度か調整された茎孔からは、後期の整然とした装飾鐔とは異なる実用本位の古格が感じられ、光にかざせば右上の文様が力強い影となって立ち上がり、通常の角度では広い鉄面の古色を静かに味わえる、簡潔さの中に発見と余韻を秘めた愛蔵価値の高い一枚です。