諸紋散図透鐔 無銘 -Mumei- 12-1766
通常価格:¥165,000
税込
諸紋散図透鐔
無銘
-Mumei-
縦80.9ミリ 横80.6ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重量110.0グラム
桃山時代~江戸前期 The Momoyama to early Edo period
附属 桐箱
諸紋散らしは、由緒や願意の異なる家紋、植物紋、器物紋を一つの画面へ取り合わせ、それぞれの形を読み解く楽しさと、異なる輪郭が響き合う図案の妙を味わわせる意匠であり、本品では筆、本、茶壺といった風雅な器物に、茗荷、三階菱、輪違い雁金、笠を組み合わせ、文雅な趣と武家好みの標章が一面に響き合う変化豊かな諸紋散図を成しています。
大振りの丸形鉄地を大胆に透かし、上段の広い地板には金布目象嵌で輪郭を引いた筆と本、下段にはもう一本の筆と小さな口を備えた丸い茶壺を置き、左右の櫃孔を囲むように輪郭の異なる紋を連ねることで、量感ある鉄地と軽快な透かしが緩急を生み、視線を巡らせるたび新たな意匠が現れる伸びやかな構成に仕上げています。
表から見た右下には金布目をふんだんにあしらった茗荷、左下には大中小の菱を積み重ねた三階菱、左上には二羽の雁金を輪違い状に組み合わせた輪違い雁金、右上には笠を配し、いずれの意匠も耳、切羽台、櫃孔へ巧みに連結させることで、透かしの多い画面に確かな強度を保ちながら、相異なる形が心地よく呼応する巧妙なリズムを作り出しています。
鉄地には歳月を重ねた深い黒褐色の古色が育ち、筆、茗荷、茶壺、輪の要所へ施された金布目象嵌は、長年の摩耗によって一部が地へ静かに沈みながらも、斜めの光を受けると古金色の線を浮かべ、華美に傾くことなく一つ一つの文様へ視線を導く品のよい輝きとなり、表裏を返すたび同じ骨格から異なる紋が立ち現れる奥行きある景色を楽しませます。
中心の茎孔には古い刀茎へ合わせた複雑な凹凸が残り、広い切羽台、太細に変化する力強い鉄骨、古様な諸紋の取り合わせから制作年代は桃山時代~江戸前期と鑑せられ、表面右端の耳に設けられた段状の直線的な切込みと嵌め込み継ぎも、単なる補修ではなく継ぎ目そのものを造形上の景色として見せるための意図的な仕事と考えられ、古色の中に侘び寂びの趣を添えており、古正阿弥や初期の京系透鐔にも通じる武張った骨格と文雅な遊び心を併せ持つ、眺めるほど図柄と鉄味の発見が深まる魅力的な一枚です。