瀑下清談図鐔 無銘 -Mumei- 12-1764
通常価格:¥99,000
税込
瀑下清談図鐔
無銘
-Mumei-
縦77.3ミリ 横72.6ミリ 切羽台厚4.4ミリ 重量106.0グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 桐箱
瀑下清談図は、俗世の喧騒を離れた高士たちが山中の滝辺に集い、自然の響きに耳を傾けながら学問や人生を語り合う姿を表した文人趣味の画題であり、奔流の動と清談の静、険しい山景と穏やかな人物表現を一つの画面へ重ねることで、高潔な精神世界と悠々自適の境地を象徴します。
竪丸形の鉄地に、表の右下には向かい合って語り合う二人の高士、左には岩間を落ちる滝、上方には雲と枝を広げる松樹、その奥には山中の楼閣を配し、片櫃孔を埋めて確保した広い画面へ人物、岩、流水、建物を重層的に組み合わせることで、鐔の小さな円内に奥深い山中世界を展開しています。
人物の顔や手、衣文を立体的な高彫で彫り分け、銀色と素銅色によって二人の表情へ変化を付けながら、衣の文様、松葉、岩肌、雲、楼閣の屋根、水辺の細部へ金の布目象嵌を広く施し、黒褐色の鉄地に点と線の光を散らすことで、複雑な景観の中でも視線が自然に高士から滝、松、楼閣へ導かれます。
裏面は独立した別景を描いたものではなく、表に構成された山水と人物をそのまま裏側から見せる造りとなっており、楼閣、松樹、雲、岩場、滝の裏側に加えて、高士たちの後ろ姿まで丁寧に表すことで、地透の構造を生かしながら一つの立体的な山水世界を表裏で完成させています。
密度の高い肉彫地透、表裏を連続させる構成、金の布目象嵌と複数の色金を華やかに用いる手法には江戸後期の装飾性と絵画志向が明瞭に表れ、遠目には金色を帯びた雄大な山水、手元では高士の表情や衣文、滝音まで想像させる細部が次々に現れる、物語性と鑑賞性に富んだ一枚です。