菊花透鐔 無銘 -Mumei- 12-1747
通常価格:¥88,000
税込
菊花透鐔
無銘
-Mumei-
縦95.1ミリ 横95.3ミリ 切羽台厚4.6ミリ 重量147.0グラム
江戸前期 The early Edo period
附属 桐箱
菊は長寿、高潔、除災を象徴する吉祥文様として古くから尊ばれ、鐔そのものを一輪の花へ見立て、花弁を中心から大きく開かせる意匠は、円環という鐔の構造を余すところなく生かしたものです。本品に見られる大径で骨太な構成、丸みを帯びた花弁と透かし際、細密な装飾へ向かわず量感と明快な輪郭を前面に押し出した素朴な造形には、江戸後期の技巧的な作とは異なる古格があり、深く沈んだ鉄色と相まって江戸前期の力強い作域を感じさせます。
ほぼ正円をなす堂々たる鍛鉄地へ、細長い菊の花弁を中心から外へ勢いよく巡らせ、地として残した花弁と大きく彫り透かした花弁を交互に配することで、力強い明暗と律動を生み出しています。ふっくらと丸みを持たせた花弁の先端がそのまま花形の耳を構成し、切羽台を花芯に見立てた姿には意匠と構造が一体となった面白さがあり、左右の櫃孔を取り込みながらも一輪の菊としてのまとまりを崩していません。透かし際を仔細に見ると、鑿で切り開き一つずつ整えた手仕事ならではの微妙な揺らぎが残り、花弁の肉には鍛えた鉄の締まりが感じられ、その上へ長い歳月を経た黒褐色の古色が重なることで、古作ならではの重厚な景色を見せています。
大らかで反復性の強い花弁の構成、細部を整え過ぎない透かしの輪郭、鍛鉄の面に深くなじんだ古色を総合すると、江戸前期頃の制作と捉えるのが相応しいでしょう。最大の魅力は、鑑賞台へ置いた瞬間に一輪の鉄の菊が大きく開く圧倒的な存在感にあり、中心から耳まで途切れずに走る花弁の流れは遠目にも鮮明で、近くに寄れば鍛肌、鑿跡、古色が織りなす複雑な表情をじっくり味わえます。これほどの大きさを一枚の鉄地から彫り透かしながら、各花弁に十分な肉を残し、全体の強さを失わずに一輪の花へまとめ上げた造形には見応えがあり、古作ならではの野趣と菊花文の格調を併せ持つ、大形鐔や鉄透鐔を愛好する方に強くお薦めしたい逸品です。