月下鶺鴒図鐔 無銘 -Mumei- 12-1743
通常価格:¥66,000
税込
月下鶺鴒図鐔
無銘
-Mumei-
縦85.8ミリ 横80.0ミリ 切羽台厚3.0ミリ 重量156.3グラム
江戸後期 The late Edo period
附属 桐箱
月下の水辺に鳥を配する意匠は、和歌や絵画に通じる静かな情趣を刀装具へ移したものです。鶺鴒は長い尾を上下に振る姿が印象的で、古くから身近な水辺の鳥として親しまれ、夫婦和合の象徴ともされてきました。満月の光と秋草、流れ、鳥という取り合わせは、音の少ない夜の気配を想像させ、江戸後期に好まれた文人的な風景表現によく適います。本作は大きな画面を余白として使い、色金を限定することで、月明かりに浮かぶ景物の繊細さを際立たせています。
縦85.8ミリ、横80.0ミリの大振りな鉄地へ、上方の月、下方の鶺鴒と葦辺の景を配しています。地板には河原一面の石を思わせる豊かな肌が広がり、月や鳥、草の要所へ残る金銀色が夜の光のように控えめにきらめきます。両櫃孔は広い余白の中へ自然に収められ、図柄を妨げず、切羽台から耳へ視線がゆるやかに流れる構成です。厚さ3.0ミリの薄造ながら156.3グラムの重量があり、手に取ると見た目以上の確かな量感を感じさせます。
正面では大きな月と鶺鴒の対比が印象を残し、近づいて眺めれば、葦の細線や水辺の点景、古色の中に沈む象嵌が少しずつ姿を現します。派手さを抑えた色調だからこそ、長い年月を経た鉄の味わいと、静かな夜景の詩情が深く響きます。大径の鐔を好む方、余白を生かした風景図を集める方、月や鳥の意匠に惹かれる方にとって、鑑賞するたびに新しい発見のある一枚で、落ち着いた佇まいは、拵の格を損なわず、鑑賞品としても飽きのこない魅力を備えています。