龍頭偃月刀図鐔 無銘 -Mumei- 12-1722
通常価格:¥99,000
税込
龍頭偃月刀図鐔
無銘
-Mumei-
縦70.6ミリ 横66.8ミリ 切羽台厚5.6ミリ 重さ100グラム
江戸中期末~後期 From the late middle to late Edo period
附属 桐箱
黒褐色の落ち着いた光沢を帯びる鉄地を巧みに透かし、一本の偃月刀を鐔の外周に沿って円環状に構成するとともに、要所へ金布目象嵌を施し、片櫃の表裏を金と赤銅で仕立て分けた、江戸中期末から後期の作とみられる鐔です。
偃月刀は三日月形に大きく湾曲した刀身を備える中国由来の長柄武器で、『三国志演義』に登場する関羽の青龍偃月刀によって広く知られ、日本でも勇武や威厳を象徴する意匠として絵画や工芸品に取り上げられてきましたが、本作では刀身の根元にあたる柄の先端を龍の顔として彫り表し、その口元から鋭く反った刀身が伸びるかのように造形することで、偃月刀に宿る力強さと霊威を印象深く表現しています。
上部に大きく湾曲した刀身を配し、そこから伸びる長柄を鐔の耳に沿って一周させるという機知に富んだ構成で、刀身、龍頭、柄、巻締め、結びを一続きの意匠として巧みに連結させながら、刀身側と柄側の二箇所に輪を介して垂れる房を添え、それぞれに刻んだ細やかな筋によって柔らかな質感と動きを与えることで、一本の偃月刀そのものが鐔の輪郭を形作る独創的な造形へと昇華されています。
刀身の稜線や龍頭、二箇所の房に備わる金具、柄に添えられた唐草状の文様には金布目象嵌が施され、黒褐色の地鉄との鮮明な色彩対比によって偃月刀の輪郭と細部が引き締められており、さらに左右に設けた木瓜形の櫃孔のうち片櫃は表を金、裏を赤銅で埋め分け、明るく輝く金を陽、黒紫色を呈する赤銅を陰として表裏に対置することで、円環をなす偃月刀の構成と呼応する陰陽一体の趣向を備えています。
厚さ5.6ミリ、重さ100グラムの確かな量感を備えた地鉄には、手取りのよい充実した厚みと滋味深い鉄味が感じられ、一本の偃月刀を円環へ転じた構成、柄先を龍頭とした力強い造形、二箇所の房に見られる繊細な彫口、金布目象嵌による端正な彩り、片櫃の表裏に陰陽を込めた仕立てが一体となった、鑑賞するほどに意匠の妙が深まる魅力ある一枚です。