矢車透図鐔 無銘(栃畑) -Mumei(Tochihata)- 12-1690
通常価格:¥110,000
税込
矢車透図鐔
無銘(栃畑)
-Mumei(Tochihata)-
縦74.7ミリ 横72.8ミリ 切羽台厚3.6ミリ 重量78.3グラム
江戸前期~中期 The early to middle period of Edo era
附属 桐箱
栃畑鐔は石見国、現在の島根県西部に伝わった鉄鐔の一群で、石見銀山との関係を背景として語られてきた地方色豊かな作域です。当地では「銀山鐔」とも称され、鉄地に大胆な透彫を施し、縄目状に仕立てた耳をめぐらせる作例が知られています。無銘のものが多く、在銘品には「石州銀山住守重」などが知られ、従来、銀山周辺の工人が余技あるいは副業として製作したことに始まるとの説も伝えられています。
本作は丸形の鉄地に矢車を意匠化して肉透とした一枚です。中央の切羽台を車の軸に見立てるように、その周囲から多数の矢を放射状に配し、矢羽を外方へ向けて車輪状の構成を作り上げています。一本一本の矢は完全な均一形ではなく、矢羽の幅や角度、透かしの間隔にわずかな変化があり、幾何学的な意匠の中にも手仕事らしい柔らかな動きが感じられます。外周には赤銅の覆輪を廻らせ、黒味を帯びた鉄地に赤銅の落ち着いた色調が加わることで、素朴な透鐔に品格を添えています。
地鉄には長年の経過によって生じた落ち着いた肌合いがあり、透かしの断面や耳周辺にも古作らしい穏やかな風合いが残されており、茎孔周辺には実際の装着に伴う調整の痕跡が見られ、鑑賞専用として作られたものではなく、刀装具として用いられてきた来歴を感じさせます。直径約75ミリと取り回しのよい寸法ながら、放射状に展開する矢車の意匠によって実寸以上の広がりを感じさせ、鉄地、透かし、赤銅覆輪という異なる要素が過不足なくまとまった味わい深い鐔です。