波龍図鐔 一風 -Ippu- 12-1663
通常価格:¥4,000,000
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波龍図鐔
一風
-Ippu-
縦77.5ミリ 横73.2ミリ 切羽台厚2.8ミリ 重量138.5グラム
江戸末期 The last years of Edo era
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
一風の名では藤(藤原か?)氏を称し、会津正阿弥正光の門人として幕末に活躍した金工が知られています。一方、本作に切られた銘は、その会津正阿弥系の一風とは銘振りを異にし、とりわけ「風」に相当する文字も通常の字形とは異なっているうえ、作品そのものの作域にも明らかな隔たりが認められます。
本作については、日本美術刀剣保存協会の審査に携わった学芸員から、会津正阿弥正光門下の一風とは別人であり、幕末を代表する名工・後藤一乗から教えを受けた人物の作と見るのが妥当ではないかとの見解が示されています。
後藤一乗は後藤家の伝統を基礎としながら従来の家彫にとらわれない素材や技法を取り入れて独自の作風を拓き、その門下からも数多くの優れた金工を輩出しました。
本作は竪丸形の四分一磨地に、怒濤の中を進む龍を鋤出高彫、象嵌色絵によって表した大作です。
黒味を帯びた上質な四分一地を広く取り、龍は頭部から髭、角、鱗、爪に至るまで極めて緻密な鏨を重ねながら豊かな肉を持たせ、金色絵によって荒海の中から躍り出るような強烈な存在感を与えています。
特筆すべきは、龍を単に鐔面へ配するのではなく、その身体を耳へ大きく回り込ませている点で、波濤もまた表面から肉彫耳へ途切れることなく展開し、鐔そのものを一つの立体的な画面として構成しています。
波頭は一つ一つ深く鋤き出され、その間には金銀の飛沫を細やかに散らし、龍の金色と相俟って荒れ狂う海の動勢と光を巧みに表現し、裏面では龍の姿を抑えて波濤を主体としながら、その一部から龍体を覗かせることで表裏を連続した一景として見せ、小柄櫃穴、笄櫃穴も赤銅を用いて丁寧に埋められています。
地金、肉取り、鏨の精緻さ、色金の扱い、表裏から耳にまで及ぶ構成のいずれにも妥協がなく、作者の力量が存分に発揮された作であり、保存刀装具の枠だけではその価値を語り尽くせないほどの完成度を備えた名品です。