波濤飛鶴蒔絵刀掛 無銘 -Mumei- 11-040
通常価格:¥495,000
税込
波濤飛鶴蒔絵刀掛
無銘
-Mumei-
江戸中期頃 Mid Edo period
附属 外箱
刀掛の大きさ … 高さ38.5センチ、幅47.9センチ、奥行18.2センチ、刀掛部の内側幅40.5センチ
外箱の大きさ … 高さ42.7センチ、幅51.5センチ、奥行横24.2センチ
刀掛は、刀剣を室内に安置するための武家調度で、江戸時代には実用具としてだけでなく、座敷を飾る漆芸品としても制作されました。とりわけ蒔絵を施した刀掛は、所蔵する刀剣とともに家格や美意識を示す調度として用いられ、吉祥を表す鶴、松竹梅、波濤などが好んで題材とされています。鶴は長寿や繁栄を象徴し、絶えず寄せては返す波と組み合わせた意匠には、長久と発展を願う意味が込められています。
本作は黒漆塗の木地に、波濤の上を飛翔する鶴を金蒔絵で表した二本掛で、表側の中央板には金粉の濃淡を用いた波濤と三羽の鶴を配し、裏側には二羽の飛鶴、左右の支柱にもそれぞれ鶴を描くことで、正面のみならず側面や背面からの鑑賞にも配慮した構成となっています。
鶴の翼や尾羽は細い描線で丁寧に描き分けられ、頭頂の赤色を添えることで丹頂鶴の姿を明瞭に表現しています。脚部にも波文を続け、黒漆の広い余白に金色の鶴と波を浮かび上がらせた、明快で格調ある意匠です。
木地は左右の支柱、中央板、台脚を均整よく組み上げ、二振の刀剣を安定して掛けられるしっかりとした造りとなっており、蒔絵の保存状態は概して良好で、鶴の細部や波濤の金粉もよく残されています。
専用に誂えられたとみられる杉材の時代箱が付属し、厚手の板材、反り止め桟、蓋板の構造、木肌の自然な経年変化からも、刀掛とともに長く大切に伝えられてきたことがうかがえます。
蒔絵の様式、木地の造り、専用箱の工作と経年状態を総合すると、制作年代は江戸中期を第一候補とします。ただし、銘、箱書、伝来を示す資料がなく、蒔絵調度は江戸後期初頭にも近似する作例がみられるため、厳密には十八世紀後半を中心とする「江戸中期頃」と表記するのが適切かと思います。武家調度としての端正な姿と、吉祥性に富む華やかな蒔絵を兼ね備えた、保存状態の良い刀掛です。