蝦蟇鉄拐図鐔 乗意(金文方印) -Jōi- 12-1569
通常価格:¥66,000
税込
蝦蟇鉄拐図鐔
乗意(金文方印)
-Jōi-
縦71.55ミリ 横68.2ミリ 切羽台厚4.9ミリ 重さ108グラム
江戸中期 The middle Edo period
附属 桐箱
蝦蟇仙人と鉄拐仙人は、中国の仙人説話を背景に、日本では室町時代以降、絵画や蒔絵、染織、刀装具に繰り返し採り上げられた画題です。蝦蟇仙人は超俗の力や長寿を象徴する仙人として親しまれ、李鉄拐は魂を身体から遊離させる術を使う仙人として、口から魂を吐き出す奇怪な姿で描かれています。性格の異なる二仙を一つの画面へ取り合わせることで、吉祥性と怪異性が同居する独特の世界が生まれ、人物の容貌、髪、衣の翻りを表現する金工家の力量も存分に示せることから、町彫金工が好んだ見応えのある主題となりました。
本品は厚みのある鉄地を丸形に仕立て、二人の仙人を表面右方へ大胆に寄せる一方、左方には広い余白を残した、緊張感のある構成が見どころです。上方には蝦蟇仙人を配し、その異相と衣の襞を肉合彫や毛彫で捉え、下方の鉄拐仙人は左手に杖を持って息を吐く姿で表され、口元から伸びる息を流麗な筋彫で描いています。衣や髪の要所には細かな金布目象嵌を施し、二人の姿を限られた右端へ重ねながらも、それぞれの輪郭を明瞭に読み取れるようまとめています。人物を中央へ大きく置かず、鐔の耳際から画面へ現れるように配した趣向によって、広大な虚空の中から仙人が忽然と姿を現したかのような余韻が生まれ、正面からは余白の静けさ、角度を変えれば彫りの起伏と金の細線が異なる表情を見せます。
裏面は文様を置かず、広い鉄地を静かに残して金文方印のみを際立たせる仕立てで、表面の濃密な人物表現との対照も印象的です。地鉄には長い年月を経た腐食痕や肌荒れが認められ、特に耳際には凹凸が現れていますが、黒褐色の古色と厚手の量感は保たれ、人物の主要な輪郭、表面の金布目象嵌、裏面の金文方印も鑑賞できます。端正に整い過ぎた鐔とは異なり、二百年以上の時間が刻んだ鉄の景色と、そこに残る金の輝きを同時に味わえる点に本品ならではの魅力があり、蝦蟇・鉄拐という人気の仙人画題、片寄せた大胆な構図、古色を帯びた鉄地へ浮かぶ金の装飾を一枚で楽しめる、古作金工の趣に富んだ鐔です。