矢橋帰帆図鐔 若芝 -Jakushi- 12-1551
通常価格:¥38,500
税込
矢橋帰帆図鐔
若芝
-Jakushi-
縦86.0ミリ 横80.3ミリ 切羽台厚4.3ミリ 重量140.0グラム
江戸中期 Middle Edo period
附属 桐箱
若芝は、江戸時代前期に長崎で活動した画僧・画家であり、装剣金工としても知られる河村若芝を祖と仰ぐ鐔工の系統です。
河村若芝は長崎において黄檗僧逸然に絵を学び、中国絵画の影響を受けた人物・山水などを得意とする一方、渡来僧木庵性瑫から金工技法を学んだと伝えられています。その作風は後代へ受け継がれ、代々「若芝」を名乗る工が続きました。
若芝鐔には、鉄地にクサラカシと呼ばれる腐食技法を用いて薄肉彫のような起伏を生じさせ、鋤下げや細かな布目象嵌を組み合わせた作が多く、山水人物図、竹図、雲龍図など、中国絵画の趣を帯びた画題で知られています。
本作は、やや縦長で大振りの鉄地木瓜形に、近江八景の一つ「矢橋帰帆」の景を表した鐔です。総体は縦86.0ミリ、横80.3ミリと堂々としており、四方を緩やかに張り出させた輪郭に左右の櫃孔を配し、切羽台厚4.3ミリ、重量140グラムという適度な量感を備えています。
表の上方には重なり合う遠山を配し、その下の水面には四艘の帆掛け船を浮かべています。矢橋から大津へ向かう船が夕刻に帰帆する景を題材としたものと考えられ、帆や船体には金銀の象嵌を交え、遠景の中に小さな光彩を添えています。下方には近景となる山裾を大きく置き、その間の道を進む二人の人物を表すことで、遠山、湖上の帆船、手前の旅人という三段の構成をつくり、限られた鐔面に奥行きのある景観をまとめています。裏には上方の遠山と下方の近山を簡潔に配し、表の湖景から連続する広々とした山水世界を示し、遠近を意識した構図には破綻がなく、若芝系が得意とした中国山水画風の情趣をよく伝えています。