農夫留守模様図鐔 -Mumei- 12-1535
通常価格:¥165,000
税込
農夫留守模様図鐔
-Mumei-
縦86.1ミリ 横82.1ミリ 切羽台厚7.0ミリ 重量256.0グラム
江戸中期 Middle Edo period
附属 桐箱
江戸時代中期には、武家のみならず町人文化の成熟とともに、故事や風俗を題材とした情趣豊かな刀装具が数多く制作されました。本作もその流れを汲む作品で、農夫の姿を描くことなく、牛と農具のみで情景を表現する趣向に優れ、見る者に物語を想像させる構成は、江戸金工ならではの洗練された美意識を感じさせます。
厚手の鉄地を円形に仕立て、片隅に川辺の景色彫り上げています。流れる水は幾重にも重なる線刻によって巧みに表現され、静かな水面の動きを感じさせ、草地には金象嵌による草が散りばめられ、穏やかな風景に華やぎを添えています。
牛は力強い体躯を高肉彫で表し、張り詰めた筋肉や頭部の表情まで丁寧に彫り上げられ、鼻綱には金象嵌を施し、落ち着いた鉄地との対比が作品全体を引き締めています。
裏面には一本の鎌のみを配し、農夫が近くで作業をしていることを暗示することで、表裏一体となった物語性を完成させています。
派手な装飾に頼ることなく、鉄の質感そのものを生かした彫刻表現は実に見応えがあり、保存状態も良好で、鉄地は緻密で潤いのある美しい鉄味を呈し、厚みのある地鉄を生かした彫りにも迫力があります。
表裏の意匠を巧みに呼応させた構成は完成度が高く、鑑賞用としても拵に組み込んでも存在感を放つ優品です。