蟷螂図目貫 無銘(美濃) -Mumei (Mino)- 13-265
通常価格:¥181,500
税込
蟷螂図目貫
無銘(美濃)
-Mumei (Mino)-
表目貫 横37.2ミリ 縦17.4ミリ
裏目貫 横37.7ミリ 縦16.4ミリ
重さ10.3グラム
江戸初期 The early Edo period
附属 日本刀剣保存会鑑定書、桐箱
美濃金工は美濃国を中心に発展し、赤銅地へ深く鋭い鏨を入れた立体的な彫りと、金を要所へ利かせた鮮明な色彩表現で知られています。草花や昆虫を題材とした作品にも優品が多く、輪郭を明快に切り立てながら細部へ密度の高い鏨仕事を重ねることで、小さな刀装具の中に生命感と装飾性を凝縮しており、本品にもその特色がよく表れています。
蟷螂は、鎌状の前脚を掲げ、自らより大きな相手にも退かず立ち向かう姿から、勇気、決断、不屈の意志を象徴する画題として武家の装具に相応しい題材です。細身の身体に秘めた緊張感と、獲物を見据えて一瞬の機を待つ姿には、静けさの中に鋭い気迫が宿り、昆虫図ならではの写実味と武勇の寓意を同時に楽しませます。
本品は深い黒色を呈する赤銅地を容彫に仕立て、二匹の蟷螂を左右で呼応する一対として表しています。腹部には細かな刻みを規則正しく連ね、節を重ねた身体の量感と引き締まった輪郭を表す一方、その上を覆う翅には交差する細線を刻んで薄く繊細な質感を描き分けています。さらに、長く弧を描く触角、節ごとに折れ曲がる脚、鋭く掲げた鎌状の前脚まで、極めて細い部分を破綻なく残しながら生き生きと造形しています。わずかに金色を宿す眼は黒い赤銅地の中で鋭い視線となり、正面からは獲物へ身構える迫力を、斜めからは頭部、胸部、腹部、翅が幾層にも重なる豊かな立体感を際立たせています。
二匹は同じ姿を単純に反転させたものではなく、脚先や触角の動き、身体の傾きに微妙な変化を与え、それぞれが異なる方向へ気を配る一対としてまとめられており、柄へ収めた際には左右から拵全体を引き締める力強い存在感を発揮します。鑑定書に記された江戸初期という時代、重厚な赤銅の古色、美濃金工らしい深く鋭い彫り、金色絵を抑えて生命の要となる眼へ集中させた巧みな演出を備え、虫図を好む方はもちろん、勇気と不屈の象徴を身近に置きたい方にもおすすめしたい、造形力に優れた魅力豊かな一対です。