塔山水図鐔 若芝 -Jakushi- 12-1499
通常価格:¥99,000
税込
塔山水図鐔
若芝
-Jakushi-
縦79.7ミリ 横75.8ミリ 切羽台厚6.3ミリ 重さ184.5グラム
江戸後期 The latter period of Edo era
附属 特別貴重小道具認定書、桐箱
若芝派については諸説ありますが、佐賀の河村氏を出自とする二人の若芝が存在したと伝えられています。一人は画業を本業とした河村若芝で、長崎に出て中国僧・逸然に学び、仏画や花鳥山水画を得意としました。もう一人は河村喜左衛門といい、画家若芝から画法や意匠面で影響を受けながら鍔工として活動した人物で、この喜左衛門が若芝派鍔工の祖とされています。
若芝派はその後数代にわたって続き、鉄地丸形の地板に風竹・山水・雲龍などの文人的な画題を表し、腐らしや布目象嵌を巧みに用いた作風で知られています。銘は草書体で「若芝」と二字を切る例が多く、肥前金工の中でも独自の詩趣を備えた一派として評価されています。
本作は厚手の鉄地を不整形に仕立てた地板に、山水風景を簡潔ながら趣深く表した作品で、地面には長年の歳月によって育まれた深い古色が現れ、鍛え肌を残した鉄味と相まって落ち着いた風格を漂わせています。
表面には山間にそびえる塔を中心として、岸辺に繋がれた泊船や水辺の景色が配され、静寂に包まれた幽遠な情景が表されています。空には銀象嵌による月が輝き、舟の櫂には金象嵌が施されることで、抑制された画面の中に効果的なアクセントを添えています。限られた装飾ながらも月光に照らされた夜景を巧みに表現しており、観る者に深い余韻を与えます。
裏面には雲間を漂う雨龍が薄肉彫で表され、金象嵌による眼と触角が静かな存在感を放っています。表の静謐な山水景色と裏の龍図を組み合わせることで、自然の神秘と吉祥性を一枚の鐔の中に巧みに収めており、作者の優れた構想力が窺えます。