菖蒲に蝶透鐔 無銘 -Mumei- 12-1465
通常価格:¥176,000
税込
菖蒲に蝶図透鐔
無銘
-Mumei-
縦83.1ミリ 横81.8ミリ 切羽台厚5.5ミリ
重さ97.2グラム
江戸前期~中期 The early to middle Edo period
附属 桐箱
菖蒲は、まっすぐに伸びる葉と端正な花姿が古くから愛され、「尚武」に通じることから武家に好まれた画題であり、優雅に舞う蝶は姿を変えて成長する生命の移ろいを思わせ、刀装具にもたびたび採り上げられてきました。本品は上下へ菖蒲、左右へ2匹の蝶を配し、円形の鐔面全体を草花と虫の姿によって満たしながら、地透による大きな余白を残すことで軽快さを生み出した、華やかさと武家らしい引き締まった鉄味を併せ持つ一枚です。
丸形の鉄地は縦83.1ミリ、横81.8ミリという大振りの姿を備え、5.5ミリの厚みを保つ耳と切羽台の間へ、弧を描きながら伸びる菖蒲の葉を大胆に透かしています。上方と下方に咲く花は花弁を肉厚に彫り起こし、その表面へ筋彫を重ねて柔らかな起伏を与え、長く反る葉を耳や切羽台へ巧みに連結することで、広い透かしを設けながら全体の強度と意匠の流れを両立させています。
左右の蝶は互いに切羽台を挟むように羽を広げ、胴をふっくらと起こし、翅には放射状の筋と細かな渦巻文を刻しているため、正面では均整の取れた構図が際立ち、斜めからは花や蝶の肉厚な彫りと鉄地の重なりが豊かな陰影を見せます。蝶の眼や菖蒲の茎の要所には小さな金象嵌を配し、黒褐色の鉄味を損なわない控えめな輝きによって視線を各所へ導いており、華美に傾かず、手元で角度を変えるたび金が静かに浮かぶ趣向も魅力です。
中央の切羽台は厚みを残して堅牢に仕立て、左右には両櫃孔を開け、茎孔の上下には銅の責金が残されていることから、実際に拵へ合わせて用いられてきた来歴がうかがわれます。耳の一部に残る深い刀傷は、武具として実際に用いられた歴史を伝える痕跡であり、このような傷は単なる損傷ではなく、持主が刃を受け止めた証しとなる「誉傷」として珍重されます。菖蒲に通じる尚武の意匠と実戦の記憶を伝える刀傷が重なり、本品ならではの力強い物語性を生み出している点も見逃せません。
無銘ながら、83ミリを超える堂々とした寸法、厚みある鉄地、上下左右へ均衡よく展開する菖蒲と蝶、肉彫と筋彫を重ねた細部、控えめな金象嵌まで見どころが多く、遠目には明快な地透の構成、手元では花弁や翅の細工を楽しめます。菖蒲の凛とした姿と蝶の優美さを一つの画面へまとめた意匠は黒漆鞘にもよく映え、拵へ合わせても独立した鑑賞品として飾っても存在感を発揮する、草花図や虫尽図の鐔を好まれる方へおすすめしたい見応えある一枚です。