三羽鶴図小柄 無銘(後藤) -Mumei (Goto)- 16-178
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三羽鶴図小柄
無銘(後藤)
-Mumei (Goto)-
全長97.6ミリ 幅14.65ミリ 重さ35.5g
江戸中期 The middle period of Edo era
附属 保存刀装具鑑定書、桐箱
後藤家は室町時代、足利将軍家に仕えた初代祐乗を祖とする刀装金工の名門で、宗家は十七代典乗に至るまでおよそ四百年にわたりその伝統を継承しました。将軍家をはじめ大名家の刀装に深く関わり、町彫金工に対して「家彫」と称される格式ある金工様式を確立。とりわけ赤銅魚子地を基調に、精緻な高彫と金を効果的に用いた色絵によって格調高い意匠を表すことを得意とし、その作風は日本の刀装金工史において特別な位置を占めています。後藤家歴代の作品には現在も美術館等に収蔵される優品が数多く残され、その洗練された造形と高度な彫金技術は今日まで高く評価されています。実際に福岡市博物館の収蔵品にも、後藤宗家七代顕乗の無銘作と極められた赤銅魚子地色絵の小柄が保存刀装具として収蔵されています。
本作は、細密に魚子を打ち詰めた深い黒色の赤銅地に、三羽の鶴が連なって飛翔する姿を高彫色絵で表した小柄です。三羽は同じ姿を繰り返すのではなく、一羽は首を伸ばし、一羽は身体を大きく翻し、もう一羽は翼を広げて前方へ進むなど、それぞれ異なる姿態を与えられています。翼や胴に刻まれた羽毛は一枚一枚を丹念に彫り分け、わずか97.6ミリの細長い画面の中に三羽の動きを巧みに連続させることで、群れ飛ぶ鶴の軽快なリズムと奥行きを生み出しています。
さらに目を惹くのが色金の使い方で、赤銅による鶴の黒を主体としながら、嘴や脚、尾羽を金色に仕立て、その強い色彩対比によって鶴の姿を鮮明に浮かび上がらせています。とりわけ尾羽には羽筋まで細かく彫り込み、金を単なる華やかな装飾としてではなく、造形を引き立てる要素として用いている点が見どころでしょう。また小柄の側面から裏面にかけても一面に金を着せており、正面の端正な赤銅魚子地とは対照的な、非常に贅沢な仕立てとなっています。
鶴は古来、長寿や吉祥を象徴する瑞鳥として尊ばれてきました。本作ではその鶴を一羽ではなく三羽配し、静止した吉祥文様としてではなく、大空を飛翔する一瞬の姿として捉えています。漆黒の赤銅魚子地、立体的な高彫、要所を飾る金色絵、そして三羽それぞれに生命感を与えた彫技が一体となり、後藤家の品格と華やかさを存分に味わえる作品です。無銘ながら保存刀装具鑑定書において「後藤」と極められており、鑑賞性の高さはもちろん、後藤家の伝統的な赤銅魚子地高彫色絵を楽しむ一点として、コレクションにも相応しい小柄といえるでしょう。