無銘(末三原 / 伝 忠光 土佐山内家伝来) - Mumei(Sue Mihara / Den Tadamitsu) - 3-915
通常価格:¥990,000
税込
刃長53.0センチ 反り1.4センチ
元幅25.7ミリ 元重ね6.4ミリ
物打幅21.0ミリ 物打重ね4.9ミリ
横手位置幅19.3ミリ 松葉先重ね4.4ミリ
裸身重量386グラム。 拵に納めて鞘を払った重量386グラム。
室町中期~後期 The middle ~ latter period of Muromachi era
昭和29年10月25日 岡山県登録
附属 保存刀剣鑑定書、黒蝋塗鞘脇指拵、下貝素銅地金着上貝金無垢土佐柏紋二重はばき、白鞘、継木
備後国三原派は、備前・備中の両国に近いが、備前伝及び山城伝いずれの影響も受けず、鎌倉末期より室町末期まで一貫して大和伝を遵守しています。
従来は、正家が祖であるとされてきましたが、同工の年紀入りの作刀がいずれも南北朝期である為、最近では鎌倉末期の国分寺助國を祖とするという説が有力となっています。
三原派は、年代で大きく三つに分かれ、南北朝より以前を古三原、室町初中期を三原、室町末期を末三原と呼称しています。
また、三原派は古い時代から評価が高く、現在でも国の指定である重要文化財や重要美術品などに多くの作刀が指定されるなど、斯界で高く評価される一派です。
本脇指は大磨上無銘ながら、姿格好に品位が宿る一振です。元先の幅差は目立たず、やや延びごころの中切先を備え、表裏には流れるような刀樋が掻き流されています。地鉄はよく練れた杢目に柾がかかり、地沸が細やかに付き、地景が現れて棒映りが立つ、総じて精緻にまとめられた肌合いです。刃文は匂口明るい中直刃調を基調とし、ところどころに柔らかな湾れを交え、足・葉が入り、物打ちから先では棒映りが一層強く出て二重刃風を呈し、鋩子は直ぐに先が丸く返り、落ち着きと風格を感じさせます。
附属の拵は当店買付時、惜しくも柄や鐔の金具取りが行われ、鞘のみが残されていましたが、前所有者の「偲びない」という想いから、当店を介して柄前を新調。切羽は熟練の職方が銀地で制作し、目貫ははばきの細三つ柏紋に合わせ、土佐柏を刻した瓦図で統一いたしました。上貝は贅沢にも金無垢で仕立てられ、重さは10グラム。仮に18金として計算した場合、地金だけで17万2千円相当。14金として計算しても13万円相当(※2025年11月27日現在)という、格式を感じさせる仕立てです。柄にがたつきは無くしっかりとしておりますが、鐔鳴りはございます。
はばきに刻された細三ツ柏紋は、一般的な三ツ柏より線の細い「丸に三ツ細柏」の初期意匠に近く、山内一豊の時代に見られるものです。後世に用いられる極端に細い「土佐柏」へと変化する以前の姿であり、研究資料としても極めて価値の高い紋章です。この脇指が山内家、とりわけ山内一豊ゆかりの品であった可能性を思うと、歴史を手にするような高揚感を覚えずにはいられません。
元々附属していた昭和29年11月の本脇指譲渡の書付を見ますと、拵付と記されているので、今よりも贅を尽くした立派な金具を用いた拵が附属していたのではないでしょうか。今その拵が離れてしまったことは非常に残念極まりないことではありますが、譲渡書に登場する松尾三良、坂本登志夫、両氏についても調査されると面白い発見があるかもしれません。
なお本脇指は研磨前の状態で保存刀剣審査に出されており、然るべき研磨を施して再審査に臨めば、備前忠光への極めが付く可能性も秘めています。譲渡状と忠光極めの鑑定状は残念ながら前所有者により散逸しておりますが、それを補ってなお余りある歴史的魅力を備えた、まさに唯一無二の逸品です。