肥後同田貫宗廣 天保十二年八月日 同彫之 - Higo Dotanuki Munehiro - 4-336
通常価格:¥660,000
税込
刃長29.4センチ 反り0.3センチ
元幅32.1ミリ 元重ね7.6ミリ
物打幅29.2ミリ 物打重ね6.3ミリ
横手位置幅29.2ミリ 松葉先重ね6.3ミリ
裸身重量317グラム
江戸後期
The latter period of Edo era
平成9年1月29日 東京都登録
附属 素銅地銀着せはばき、白鞘(備山鞘書)
同田貫は九州肥後国菊池の同田貫(地名)を本拠地に、永禄頃から活躍した肥後刀工の一群で延寿派の末流と伝えられています。本刀の作者である宗廣は、肥後同田貫一派の末尾を飾る良工で、本名を小山太郎と云いました。彼は同田貫有宗、肥後細川家の六千石重臣とともに江戸の水心子正秀に学び、刻銘は、肥後同田貫宗廣、肥後同田貫宗廣作、肥後同田貫上野介拾代嫡孫延寿太郎宗廣作、肥後同田貫小山延寿太郎藤原宗廣作、肥後同田貫延寿宗廣、小山延寿太郎藤原宗廣などと切り、天保元年から明治四年までの作品が経眼されます。
新々刀期の同田貫は、身幅広く重ね尋常。切先伸び心で反り程良く、鍛えは小板目または杢目肌。主に備前伝の丁子乱れ刃を焼き、中には兼元を範とした作品も見られ、この御刀も掟通りの作品ですが、通常に見る粗雑な雰囲気の同田貫とは一味違った品格を備え、姿、地鉄共に良く、匂口明るく冴えた華やかな腰開きの互ノ目に互ノ目丁子を交えた会心の出来口を示しており、新々刀同田貫の代表作と言えます。
尚、胴田貫の由来は、田んぼに死体を横たえて胴を切ると、胴を貫(ぬ)けて下の田んぼまで切り裂く、から来ており、旧幕臣にして直心影流の継承者である榊原鍵吉が、明治天皇の御前で兜を割った際にも同田貫の刀が使われました。また、時代劇では『子連れ狼』の主人公、拝一刀の愛刀として、『破れ傘刀舟悪人狩り』でも、主人公である蘭学医・叶刀舟の愛刀。『三匹が斬る!』においても、主人公の一人である千石こと久慈慎之介の愛刀として登場し、正宗や村正と並んで馴染み深い刀として大変人気があります。
本短刀は、身幅広く重ね厚く、フクラたっぷりとした豪壮な姿を誇り、一目で同田貫の真骨頂を物語る一振です。表には草の三鈷柄付剣を、裏腰元には二本樋を丈比べに掻き、更に宗廣自身の手による彫り物が施されており、作域の高さと気迫を感じさせる特筆すべき出来映えとなっています。
地鉄は杢目がよく練れて白く肌立ち、精美かつ力強い鉄味を示し、刃文は湾れ調子に小互ノ目や丁字を交え、刃縁・刃中には地鉄に絡んだ繊細で複雑な働きが豊かに顕れ、足・葉・砂流が随所に冴え渡ります。鋩子は乱れ込んで先丸く返り、実用性と美観を兼備した姿を見せています。
豪壮な姿に宗廣自身の彫技、そして地刃の冴えを兼ね備えた本作は、新々刀同田貫の中でも特に出色の出来。特別保存刀剣同時審査を自信を持ってお薦めできる、真にコレクションに加えるべき逸品です。