蝙蝠図 正阿弥重常Shoami Shigetsune 14-130
通常価格:¥660,000
税込
蝙蝠図縁頭
正阿弥重常
-Shoami Shigetsune-
縁金具の縦41.2ミリ 縁頭の高さ11.65ミリ 頭金具の縦39.2ミリ
重さ36.9グラム
江戸中期 The middle period of Edo era
附属 特別保存刀装具鑑定書、桐箱
正阿弥重常は、秋田正阿弥を代表する金工の一人です。重吉(伝兵衛)―重高(伝内)―重常へと続く秋田正阿弥の名流に属し、江戸に出て土屋安親にも学んだと伝えられ、修業の後に秋田へ戻って師とともに佐竹家に仕え、のち家督を継いで伝七を名乗りました。
秋田藩に伝来した「佐竹藩鍔師正阿弥氏由緒書」にも、重吉、重高、重常、重央へと続く系譜が記録されています。秋田正阿弥は江戸時代を通じて佐竹家のもとで発展し、鉄地の鐔のみならず、赤銅、四分一、素銅などの色金を用いた精緻な刀装具も数多く手掛けました。
重常の作品は早くから海外でも知られ、十九世紀末に形成された刀装具コレクションにも「秋田の正阿弥重常」の作として収録例が確認されるなど、その技量は国内外で評価されてきました。
本作は赤銅磨地に蝙蝠を題材とした縁頭で、縁は41.2ミリを測る大振りの一具。縁金具では深い黒色を呈する赤銅磨地そのものを夜空に見立て、その中を大きく羽ばたく一匹の蝙蝠を素銅で立体的に彫り出し、頭金具には雲間から覗く満月と同じく夜空を舞う蝙蝠を配することで、縁と頭を合わせた時に月夜の空を蝙蝠が飛翔する一つの情景が完成する趣向となっています。
蝙蝠には高肉彫と鋤出彫を巧みに用い、翼膜の張りや身体の丸みを柔らかな起伏として表現しながら、眼には小さく金象嵌を施して暗い夜空の中に鋭い光を添えています。
赤銅磨地の漆黒と素銅の温かみを帯びた色調を対照させ、そこへ眼の金をわずかに効かせた色彩構成には抑制の利いた美しさがあり、大振りの金具を生かした伸びやかな構図と、生き生きとした蝙蝠の造形に重常の優れた彫技と意匠感覚が窺えます。
蝙蝠は「蝠」の音が「福」に通じることから吉祥意匠として用いられてきた画題でもあり、令和七年に特別保存刀装具鑑定書が交付された、秋田正阿弥の名工重常による鑑賞性の高い優品です。