大森彦七図縁頭 一蝶筆宗興(花押)-Iccho hitsu Soyo- 14-252
通常価格:¥330,000
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宗與は元禄十三年、江戸にて横谷宗寿の次男として生まれ、男児のなかった宗珉の養子となり、享保十七年に四代目を継ぎました。明和三年、六十七歳にて没。作域は四分一磨地に片切彫の作が多く、赤銅魚子地に高彫象嵌色絵の作も僅かに残されており、宗珉の後継者としての力感と品格を備えた、見事な出来栄えを示しています。
この縁頭は、太平記二十三巻の名場面「大森彦七図」を題材とした作品です。南北朝時代の武将・大森盛長(通称彦七)は、湊川の戦いで楠木正成軍を破った伊予の勇将。
ある夜、猿楽に出かけた際、川を渡れず困っている女人を背負って渡ろうとしたところ、途中で背中が重くなり、不審に思って月明かりに映る顔を見ると、なんとそれは鬼の顔であった。この鬼は楠木正成の怨霊で、彦七に祟ろうとする場面が本図の背景です。
浮世絵や歌舞伎十八番にも描かれる名場面ですが、宗與は独自の図案として、河の流れを廃し、鬼女を睨み付ける彦七を正面から側面に巡らせた高彫で表現しており、迫力と存在感に満ちた佳作。高い技量を余すところなく示す、歴史・物語・技術が一体となった至高の一作です。