一路平安留守模様図鐔 無銘(水戸)-Mumei(Mito)- 12-1417
通常価格:¥110,000
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水戸は、徳川御三家の一つで三十五万石を誇る城下町であり、特に江戸時代後期には多くの金工が活躍しました。様々な地金を駆使し、巧妙な手法で生み出された作品が数多く残されています。流派としては赤城軒系と一柳系が目立ち、いずれも高い技術を誇ります。
本鐔の画題「一路平安」にも深い意味が込められています。鷺は中国語で「路」と同音であり、一羽の鷺は一路を象徴し、旅路の平安を祈る意があるとされます。本作では、葦が茂る川辺に繋留された舟の舳先に、一羽の鷺が羽を休めている姿が描かれています。旅の途中での休憩か、あるいはこれから舟で旅立つ場面か… そんな情景を、わずか一枚の鐔に巧みに表現しています。
参勤交代など長い旅路を強いられた当時の武士にとって、旅の安全や無事を願う心情が映し出された名品です。細やかな表現と歴史的な趣を兼ね備えた本作は、鑑賞するだけで往時の情景を追体験できる、格調高い逸品といえるでしょう。